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たとえば、人と話しているとき、直立不動で相手と向き合う人はいないでしょう。多くの人が、何気なく「髪の毛を触る」「鼻を触る」「手を組む」などのしぐさをしているはずだし、いろいろな姿勢をとっているはずです。 ですが、そうしたしぐさや姿勢をするからといって、相手に何かのメッセージを伝える意図などない場合がほとんどです。なかにはクセになっている人もいるし、実際、鼻がムズムズしているような場合だってあります。 ところが、こちらは何も意図していないちょっとしたしぐさに、相手が何らかのメッセージを見出してしまう場合があります。 それがポジティブなメッセージとして伝わるのならまったく問題ありませんが、往々にして「話に関心を持っていないのではないか」とか、「何か隠しているのではないか」などと、ネガティブに解釈されることも多いからやっかいです。 そんな、何気ないしぐさや姿勢のせいで悪印象を持たれてはたまりません。 では、どう対処するのがいいのでしょうか。 ★これは意外と簡単で、会議や交渉などの公的の場で、相手にヘンな誤解を与えたくないようなときには、自分がよけいな行動をとっていないか、ときどきチェックすることを習慣づけておけばいいのです。 意識していないからこそ、ついつい、髪の毛を触ったり、鼻に触れたりしてしまうのですが、たとえば会議が始まる前に、「気をつけよう」とちょっと意識するだけで、それらの無意識のしぐさや姿勢は十分にコントロールすることができます。
昔、お母さんやおばあちゃんから、街を歩いているときに、怖い人と出くわしたら、「見たらあかん。見たらあかん」といわれた経験がある人もいるのではないでしょうか。 その通りで、怖い人とへたに目を合わせると因縁をつけられる危険が高まっていくものです。だから、関わりを持ちたくない人の目を見てはいけない、と教えられたのです。 一方、道を歩いているときなど、ぶつからないように一瞬相手の目を見ますが、すぐに視線を外し、お互いに自分が進む方向へ目をやるものです。 ただ、通り過ぎるだけだから、お互いに関係性を持つ必要はありません。一瞬目を合わせて、そして視線を外す(見ない=無視する)ことが礼儀にかなっているのです。つまり、「礼儀正しい無視」というわけです。 ですが、職場の同僚や上司に対して「見たらあかん」や「礼儀正しい無視」を乱用しては、当然ながら大きなマイナスとなりかねません。 相手から「アイツは自分のことをバカにしている」「彼はいつも上から目線だ」などと誤解されるのが関の山です。 ★そういう意味では、社会に出たら、視線を合わさないことも必要だし、状況によっては視線を合わすことも必要であることを使い分けることが大切です。
上司と部下の関係では、地位の下の者が地位の上の者とまともに正面切って視線を合わせるということはあまりないでしょう。視線を伏せ気味にするとか、合わせてもすぐ外すなどしているはずです。 そもそも、お互いに面と向かって正面切って視線を合わせるということは、対等であることを意味します。それを両者が合意していれば何の問題もありません。むしろ気持ちよく話ができるでしょう。 では、対等な関係なら、ジッと目を合わせて話をするかというと、そんなことはありません。実は、人が人と視線を合わせるという行為は、かなりストレスフルな行為なのです。 だから、通常、友だち同士で話をしていても、ずっとお互いに目を合わせているということはないはずです。正面を向いて相手に顔を向けながらも、焦点を少しぼかすとか、視線をずらして、話している相手の口元に目をやるなどしているはずです。 そして、タイミングを見計らって、アイコンタクトをします。それは何か相手が重要と思えることを言ったとき、つまりキーワードが口をついて出たときとか、自分が特に関心がある事柄が話に出たときなどであります。それで相手の話をちゃんと聞いているというサインとして十分伝わるものです。 ★上司や難しい相手とのコミュニケーションをスムーズにするためにも、そうしたアイコンタクトのとり方を、日頃から研究し、鍛えておきましょう。
コミュニケーション・チャンネルは、大きく分けると、「聴覚的チャンネル」と「視覚的チャンネル」に分類できますが、この聴覚的チャンネルには、意識内容そのものもさることがら、言い方(つまり、声のトーンとか速さ、抑揚、強さ、大きさなど)も含まれ、「準言語」と呼ばれています。 ★そのひとつが「間」であり、人がおしゃべりするときに意外なほど重要な役割を果たしていることです。 たとえば、交渉の場で立て板に水とばかりに話をする人を相手にすると、どうしても相手のペースにはまってしまいます。そこで利用したいのが、この「間」です。 マシンガンのように切れ目なく言葉を発するような人でも、必ず息つぎで会話が途切れる瞬間があります。その「間」を利用して、聞き手としての立場と話し手としての立場を逆転させるのです。 相手がひと呼吸置いたところで、すかさず「ところで」と話を転換すればいいでしょう。そこで攻守逆転のチャンスをつかむのです。 ★そのテクニックを習得するためには、友だちと会話をしているときなどに、相手がどんな瞬間に息つぎをしているかに注意するといいでしょう。そのタイミングはさまざまでしょうが、よく観察していれば、人によってリズムがあることがわかってくるはずです。 常日頃から多くの人を観察しているうちに、「間」をつかむ感覚も鍛えられ、会議や交渉の場で大いに利用できるでしょう。
視線の交錯(アイコンタクト)も「間」をとるチャンスです。 相手とアイコンタクトをした瞬間を狙って、「ところで・・・」と自分の話したいことを切り出していくきっかけをつかめることです。 だいたい、人はお互いにサインを出し合いながら会話の流れを調整していくものですが、サインの出し方がまずいと、相手に気づかれないまま、会話が流れていってしまうし、タイミングがズレると、発言がかぶったりすることになります。はっきりとアイコンタクトをとって、相手に対して、「次は私がしゃべりたいのだ」とサインを出すことが大切です。 ★視線は、基本的には対象への関心の度合いを表すといってもいいです。人は関心を持つ対象には顔を向け、視線を合わせて、よく見ようとします。そのとき瞳孔が開いているのです。よく見るためには光線をたくさん取り込む必要があるからです。 この瞳孔が開いた視線というのが意外と効果的なのです。 街中にある広告の写真に写っているモデルの瞳は、たいてい瞳孔が開いているはずです。瞳孔の開いた瞳は相手への関心の高さを示しているのですから、多くの人はその写真の前を通り過ぎる間、自分がずっとそのモデルから見つめられているような気がしてきて、「ついつい広告に目をやる」という行動が引き起こされるのです。 ★そうした効果のあるアイコンタクト力を磨くためには、ときどき鏡で自分の視線をチェックしてみるのもいいかもしれません。できるだけ自然に目を見開く訓練をするのです。また女性の場合は、「勝負」の前には目が大きく見えるような化粧をするのも効果的です。
★人は時として、相反するメッセージを同時に送り出すことがあります。言葉で何かをいう一方で、顔の表情、姿勢、声の調子などで、正反対のことを表現するのです。 身近な例では、「冗談」や「皮肉」がその代表でしょう。 たとえば、「お前、バカだなあ」と笑いながら、明るい口調で言ったとしましょう。「バカ」はネガティブな言語メッセージですが、「笑顔」や「明るい声」はポジティブな非言語メッセージです。そしてこの場合、全体的なメッセージは「冗談」としてポジティブに解釈されます。 一方、しかめっ面をしながら、暗い声で「お前はほんとに賢いよ」といえば、それは「皮肉」です。ポジティブな言語メッセージが、ネガティブな表情や声を伴って送られることによって、全体的にはネガティブなメッセージと解釈されることになります。 こうした矛盾したコミュニケーションは、関係性が良好な相手ならあまり問題になりません。お互いに「それってどういうことさ」と突っ込みを入れて、気楽に確認することが可能だからです。 ですが、仕事上など公の場ではそうはいきません。その頻度が高くなると、相手は、「この人の言うことはよくわからない」「何が言いたいんだろう」という、曖昧な印象を持たれることになってしまいます。 もちろん、矛盾するコミュニケーションにも効用があります。 たとえば、同僚や部下に「本当にいい加減なヤツだな」とにこやかな表情で明るい声で言った場合、表明された言葉で相手の「いい加減さ」をきちんと指摘しながらも、非言語的な部分では、「だからといって全面的に否定しているのではなく、ちゃんと受容しているよ」という解釈を成立させることも可能です。 ですが、こういう矛盾は高等技術がいるので、公の場での「矛盾するコミュニケーション」は避けたほうが無難です。 |
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